家族が溺れた!
友達が波にさらわれた!
助けに行かなくちゃ!
大事な人が危険な目に遭っている。
これは何とかしたいと思うのが当然ですが、自分で何とかできるのかという事を冷静に考える必要があります。
Contents
とにかく落ち着く
目の前で流されても落ち着く
あっ、アイツ流されてないか…?!
落ち着いて。ちょっと様子見てみましょ
溺れてるんだぞ!冷静になれるわけないだろうが!俺は助けに行く!
ばかっ!落ち着けって言ってるでしょうが!二次災害に遭ったらどうするの?!
おまっ、アゴに掌底打はない…だろう…(バタン)
腕力で黙らせるのは論外ですが、焦って飛び込んでも救助者自身が被害者になることがあります。
二次災害状況
画像引用:水難救助中の二次災害の死亡率 河川財団
被害者を救助しようとして二次災害にあった人の内訳です。
水難事故1861件のうち二次災害が発生した105件に対しての内訳です。
二次災害の発生率は約5%で図の右側の「二次災害の被害者状況」は救助に行った人に対しての割合ではないことに注意です。
以上を踏まえてから見てもらいますと、二次災害が発生した時の9割以上が「死亡」「行方不明」「重体」となっていて、二次災害に遭われた方のほとんどが亡くなったり重体になっていたりします。自身の身を挺しても助けたかったという気持ちを考えると、本当に痛ましいことです…。
難しい話になりますが飛び込む前にまず本当に自分でどうにかできるか判断することが必要になります。
できれば、その判断は一番最後にしてもらってまずは周りの人に協力をお願いしましょう。
水難が発生したら(救助者を発見した場合)
・救助者自身の安全を確保する
・周りに協力をお願いする
・救援要請をする(119番(海の事故は118番))
・溺れている人が浮けるものを渡す
・陸の上からの救助を試みる
・【緊急時】飛び込んで救助する
・飛び込まないで待つ
・救助後に容態を確認する
救助者自身の安全を確保する
冒頭のように、飛び込んで助けに行きたい気持ちもわかりますが、まずは助けに行く前に自分が安全かどうか確認しましょう。
溺れている人がもし川岸や岸壁から滑って落下した場合、その周辺は滑りやすい状況にあります。
そうなると、助けに行く自分自身も滑って落ちてしまうケースもあります。
また、溺れている人に泳いで近づいた場合、パニックになっていて、暴れたり抱き着こうとしてしまいます。
それによって、救助者も一緒に溺れてしまうケースがあります。
そうならないためにも命綱を用意したり、浮力を持つ道具(浮き輪など)を用意したりして自分が被害に遭わないようにしましょう。
そういう準備をしているうちに冷静さを取り戻せますし、周囲の人に協力を求めるという考えが浮かんできます。
周囲に協力をお願いする
溺れている人を発見したら、まず周りの人に協力を求めましょう。
自分の手持ちの道具だけでは何とかならなくても、周りの人ならいい道具を持っているかもしれませんし、救助のためのアイデアが浮かんでくるかもしれません。
要救助者から目を離さないで「おぼれている!助けてくれ!」と声をかけましょう。
ぞろぞろと救援活動はできませんが、必要な道具を集めてきたり、病院や消防署に連絡したりとやれることはたくさんあります。
協力してくれる人が多いに越したことはないのです。
救援要請をする(119番(海の事故は118番))
119番に連絡をして救援要請をお願いしましょう。海の事故は118番です。
詳細な場所を説明できるとよいですが、最近の携帯電話にはGPSが付いていることが多いため、通報した時点で大まかの場所が分かることがあります。
それでもきちんと伝えられた方がいいので、住所が分かる方がいたら教えてもらいましょう。
自力で助け出せた場合でも、救急車は呼んでおきましょう。
救助後数時間経ってから症状が悪化する二次溺死というものがあります。
見た目はそんなに悪くなくても、病院で検査を受けておいた方がよいでしょう。
溺れている人が浮けるものを渡す
大けがをしていたり、心肺停止状態でなければ、溺れている人の死因は呼吸が出来なくなることです。
では、呼吸をするにはどうしたらいいかというと、水面より上に口や鼻を出すしかありません。
流れのある川の中で、呼吸をし続けられるような位置に口を出すというのは自力ではかなり大変です。
そのため、まず、呼吸ができるように浮けるようなものを投げて渡すようにします。
があれば、投げ入れるのがベストです。
これならば、溺れていても使い方が分かるのがいいですね。
川遊びに行った時に持っていそうなものです。
こちらも浮きますので、アンダースロー(下手投げ)で救命者のもとに投げ入れます。
ペットボトルは中に少し水を入れておくと、重りになって遠くまで投げやすくなります。
こちらももしあれば浮きますので投げ入れましょう。
これらをつかんでもらって浮いてもらい、なるべく自力を使わずに浮いてもらって呼吸を確保します。
陸の上からの救助を試みる
浮けるものを渡して要救助者の安全を確保したら、水に入らずに助けられる方法を試します。
・体を伸ばして要救助者の所へ行く
・長物を使ってつかんでもらう
・ロープなどを投げる
体を伸ばして要救助者の所へ行く
手を伸ばして届きそうなら、自分が滑り落ちない体勢になりながら要救助者をつかみます。
画像引用:溺れた人の救助 日本赤十字社
自分一人で距離が足りない場合は複数人で手をつないで要救助者のところへ向かいます。こちらも安全は十分に確保します。足のつかない場所ではこの方法は行わないようにします。
長物を使ってつかんでもらう
画像引用:溺れた人の救助 日本赤十字社
長い棒や長い板など、長いものを使って要救助者を引き上げるようにします。
ロープなどを投げる
画像引用:溺れた人の救助 日本赤十字社
素早くロープの輪(大・小)を作り、ロープの端はしっかり足で踏んでおきます。
ロープを投げて、そのままロープ全部が流れていかないためです。
溺れた人の頭上を越えて後方に落ちるように投げます。
手前に落ちても、つかめませんが、通り過ぎるほど後方に投げたなら、流される途中でキャッチできます。
急いで引き上げると、せっかくつかんだのに振りほどいてしまいますので、ゆっくりと引き寄せます。
引き寄せる時は一人でやらずに周りの人の協力を得て体を支えてもらったりして、自分の安全も確保します。
【緊急時】飛び込んで救助する
他に方法がなく、やむを得ない場合の対処法です。
救命道具を持っていく
これは上記で述べた「浮けるもの」ですね。
あるいは自分の体に巻き付けた命綱などです。
飛び込んで救助すると言っても裸一貫で飛び込むではなく、きちんと安全と道具を確保してから水に入ります。
もし道具がない場合は、救助隊が来るまで待つしかありません。焦る気持ちがあるのはわかりますが、救助する側の安全を確保することも同様に大切なことなのです。
服を脱いでから救助に行く
服を着たままでは思うように動くことが出来ません。
水に浸かった服は体の自由を奪います。
また、服を着たまま泳いでいくと着ていない時よりも疲労してしまいます。
服を抜いてから救助に向かいましょう。
ただし、これは助けに行く側の話。
救助される側は着衣のままがよいです。
少し距離を取って救助にあたる
すぐにそばに駆けつけると、しがみつかれて両方とも溺れてしまうことが多いです。
少し離れて救命道具を渡し、呼吸を確保したうえで落ち着いてもらいましょう。
そこから一緒に戻れば大丈夫です。
後ろから近づくのが良いとされていますが、救助される側は助けに来てくれた人のほうをどうしても向いてしまいますので、背後から近づくのは素人には困難です。
飛び込まないで待つ
道具がなく、人手もなく、うまい方法も思いつかない場合は救助隊が来るまで待ちましょう。
心苦しいかもしれませんが、自分が二次災害に遭うのは避けねばなりません。
救助後に容態を確認する
無事に引き上げることが出来たから一安心…という訳にはいきません。
引き上げた後に具合はどうなっているのか確認する必要があります。
・意識を確認する
・呼吸を確認する
・呼吸がない場合は呼吸がない原因を探る
・心臓マッサージを行う
呼吸がない原因を探る時に、口の中になにか異物が入っていないかを確かめます。
水中で波にもまれた場合に、水中に漂っていた異物が入ってしまうことがあります。
心臓マッサージは以下の動画をご覧ください。
心肺蘇生法の手順
心臓マッサージ
youtubeへのリンクになります。
水難が発生したら(自身が事故に遭った場合)
今度は自分が水難に遭った場合を見てみましょう。
・浮いて待つ
・衣類は脱がない。靴も履いたまま。
・叫んで助けを呼ばない
・手足は水の中に
UITEMATE=「浮いて待て」
水難の時の合言葉は「UITEMATE(ウイテマテ)」。
画像引用:【水難事故】サーファーも知っておきたい、溺れている人の見分け方と救助方法 WAVAL
水難に遭った時に、自ら泳いで岸に向かうよりも、水中で浮いて救助を待つ方が救命率が上がることが分かっています。
なので、水中に落ちてしまった際はパニックにならず、まずは浮いて漂うことを考えましょう。
基本的には人は浮く構造になっているという事を信じるようにします。
万一の水難に備え着衣泳学ぶ 笠間・南小の5、6年生
youtubeリンクになります。
「着衣泳」と呼ばれる、服を着たまま浮いて待つ方法です。
「泳」と付きますが泳ぐ方法ではありません。
イギリスでは90%の小学校でこの着衣泳を実践して身に付けさせています。
日本では必要に応じて各学校で行われています。
ぼくもこの方法は体験したことがないので、実際のやり方はわかりません。
水難の事故を減らすためにも、学校で必修にさせたほうが良いかもしれませんね。
衣類は脱がない。靴も履いたまま
衣類を着たままでいることで体温が逃げることを防ぎます。
また、流されている途中で岩に当たったりしたときに体が傷つくのを少しでも防ぎます。
靴も履いたままにします。
最近の靴は軽いものなら浮くように作られているため、浮力の足しになるように履いたままでいます。
こちらも服と同じように、流されている間に川底などで足を怪我することの予防にもなっています。
叫んで助けを呼ばない
叫ぶという事は体内にある空気を外に出す行動です。
空気を出してしまうと、体の浮力が下がることになり体が沈んでしまいます。
また、叫ぶことで体力も消耗してしまいます。
一度気づいてもらえたら、あとは叫ぶのを我慢して救助を待ちましょう。
手足は水の中に
人の体は浮くと言っても、それはほんの2%程度です。
その2%を口や鼻に割り当てることが必要になりますが、手足が水面より上に出ていると、その分、体のほかの部分が沈んでしまいます。
着衣泳を行うためにも手足は水の中に入れておいたままにしておきましょう。
まとめ
救助する時も救助される時も「冷静さ」を保つことが第一です。
とはいっても、水の中にいることの恐怖はそう簡単に払しょくできません。
でも、日頃から知識を蓄えておくことで、状況を打破する知恵となります。
この知識があるかないかで生死を分けることも十分に可能性があります。
まずは水難を発生させないことが重要です。
もし起きてしまったら冷静に対処すれば多くの命を助けることが出来ると思います。
水難への対処法を身に付けて、楽しく安全に海や川へ出かけたいものですね。
その1 大人と子供では大人のほうが危険?!
その2 海より川のほうが危険?!
その3 救助をするためには水に飛び込むな!