という訳で、奨学金についてみてみましょう。
最近、「奨学金の返済が日々の生活に重くのしかかる…」ようなニュースが時折みられますが、正しく活用して有効に利用していきたいものです。
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奨学金破産者が増えている
ニュースの一例
ニュースで流れてくるのは、奨学金の支払いが遅延していて、とてもじゃないけれど返せる額ではなくなっていて、それで仕方なく自己破産してしまうというもの。
その際に、借りた本人だけが影響を受けるのならばよいのですが、借りる時に親が連帯保証人になっている場合、親のほうにお金の督促が行ってしまいます。
借りた子供が20代後半だと、親のほうもそろそろ還暦にさしかかるあたり。老後に向けての貯蓄をしているか、貯蓄を利用して生活している人達です。
そこに突然数百万のお金を払うように督促が来るのですから生活が苦しくなってしまいます。
奨学金の延滞者は平成25年時点で約30万人ほど。決して少なくはない人数です。
延滞者は奨学金についての十分な知識がない?
奨学金延滞者の約半数は、奨学金の申請書を作成するときに、自分がかかわっておらず、親や代理の方が作成ししています。また、奨学金に返還義務があることを知るのも、無延滞者より遅い傾向にあることが分かっています。
・返済義務なし
・返済義務あり(無利子)
・返済義務あり(有利子)
奨学金はざっくりとこの分類に当てはまると思いますが、自分が利用している奨学金がどのタイプなのかを理解しておく必要があります。
奨学金の説明会などで、貸与型の奨学金は借金と同じという説明を口頭と書面で受けると思いますが、さらっとした説明だと頭に残らないかもしれません。
返還義務ありの奨学金は借金と同じという事を覚えておきましょう。
名前が奨学金だとなんとなく返さなくてもよいような気持ちになりますが、借金と言い切ってしまえば、これは返すものなんだという意識が学生時代から持てると思います。
そうすれば、奨学金を毎月使い切ることなく、余裕がある時は残しておこうという意識につながりますね。
ただ、奨学金を借りるほどなのですから、生活に余裕がないという事もわかります。
給与水準が下がったことも延滞の一因
非正規雇用が増えたことで、安定して収入を得ることが出来る人が少なくなってきていますね。
派遣社員だったりすると有期雇用で、契約期間が終わったら収入が途絶えることになります。
また、保育士や介護職員など、社会的に必要な職業であるにもかかわらず、その給与水準は低く、一生懸命働いているけれど、奨学金の返済に回すだけの余裕はないという事もあるかと思います。
本人たちも返したいと思っているけれどなんともならない状況下で、自己破産を選ぶ人が増えているのです。
夢をかなえるための奨学金で、夢を変更することも
大学卒業まで借り続けると、奨学金の返済額は200万円以上になることがほとんどです。
その金額を見て、やりたいことをやり続けてその額を返済できるのか考えた時に、夢をあきらめて、いったん普通の職に就くことにする人もいます。
夢の支援のはずが、足かせになってしまって、夢を変更せざるを得ないこともあります。
能力不足で諦めるならともかく、お金で諦めてしまうのは、のちのち後悔につながったりしますので、何とか頑張ってもらいたいものですが。
奨学金について
奨学金の概要
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金についてですが、
・大学
・短期大学
・高等専門学校
・専修学校(専門課程)
・大学院
以上の学生の支援を目的として貸与されるお金です。
これらの学校を卒業した日または退学した日の6か月後から返済義務が発生します。
奨学金の種類について
奨学金の種類は概ね3種類
・給付型奨学金(返済義務なし)
・第一種奨学金(無利子)(返済義務あり)
・第二種奨学金(有利子)(返済義務あり)
無利子であっても、支払いが遅延すれば、延滞金が加算されていきます。
利息や利子という言葉が出てきますが、利子というのは、借りたお金に「少し上乗せして返すお金」のことです。
例えば、100万円借りた時に、100万円返して終わりではなく、定められた利率に応じて余分に返さなくてはなりません。
100万円借りて利率が3%だとすると103万円返すことになります。
つまり、無利子のほうが、借りる方としてはお得!という事になりますね。
その分、受けられる条件が難しくなっています。
給付型 | 第一種(無利息) | 第二種(有利息) | |
対象 | 住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生
※すでに進学している人も申請が出来ます。 |
国内の大学院・大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)に在学する学生・生徒 | 国内の大学院・大学・短期大学・高等専門学校(4・5年生)・専修学校(専門課程)の学生・生徒 |
利息 | なし | なし | 年(365日あたり)3%を上限とする利息付です。なお、在学中は無利息 |
選考 | 世帯収入の要件を満たしていて、しっかりとした進学の意欲のある人
成績が一定の基準を満たさなくてもレポートや面談でやる気ありと認められれば給付を受けられます |
特に優れた学生及び生徒で経済的理由により著しく修学困難な人を選考 | 第一種奨学金よりゆるやかな基準によって選考 |
貸与額 | 世帯収入、自宅から通う自宅外から通うか、通う学校の種類(大学、高等専門学校、専門学校)によって、支給額が定められます | 学校種別(大学院・大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程))、設置者(国立・公立・私立)、入学年度、通学形態(自宅通学・自宅外通学)によって定められた貸与月額を選択 | 大学院においては5種類の貸与月額から、大学・短期大学・高等専門学校(4・5年生)・専修学校(専門課程)においては11種類の貸与月額から、それぞれ自由に選択できます。 |
返還方式 | 返還の必要なし | 1.所得連動返還方式
2.定額返還方式 |
給付型奨学金の対象者の拡大
高等教育の修学支援新制度により、2020年度(令和2年4月1日)より給付型の奨学金を受けられる対象者を拡大することになりました。
これにより、お金により進学を諦めていた人も、進学できる可能性が広がります。
財源は消費税から拠出しているそうで、ぼく達の消費行動が、若い人の力になっていることは嬉しいことですね。
奨学金の返還方式について
奨学金の返還方式についてみてみましょう。
・所得連動返還方式
・定額返還方式
おおまかに2種類ありますが、給与に応じて返済額が変わる「所得連動変換方式」と決まった額を返し続ける「定額変換方式」があります。
所得連動返還方式
前年の所得に合わせて、その年の返還額が決まります。
所得によって金額が変動するので、収入が多ければ早めに払い終わりますし、収入が少なくなれば、払う期間も伸びてしまいます。
払い込みの期間がいつまでになるかわからないことになります。
定額変換方式
こちらは借りた金額を、「割賦金の基礎額」で割り、出た数字を12倍して返済回数を決める方式です。
貸与総額(借用金額) | 割賦金の基礎額 |
200,000円以下 | 30,000円 |
200,001円~400,000円 | 40,000円 |
400,001円~500,000円 | 50,000円 |
500,001円~600,000円 | 60,000円 |
600,001円~700,000円 | 70,000円 |
700,001円~900,000円 | 80,000円 |
900,001円~1,100,000円 | 90,000円 |
1,100,001円~1,300,000円 | 100,000円 |
1,300,001円~1,500,000円 | 110,000円 |
1,500,001円~1,700,000円 | 120,000円 |
1,700,001円~1,900,000円 | 130,000円 |
1,900,001円~2,100,000円 | 140,000円 |
2,100,001円~2,300,000円 | 150,000円 |
2,300,001円~2,500,000円 | 160,000円 |
2,500,001円~3,400,000円 | 170,000円 |
3,400,001円以上 | 総額の20分の1 |
じゃあ、試しに総額250万円借りた時の定額変換方式を計算してみましょう。
表と照らし合わせると、250万円だと割賦金の基礎額は16万円ですね。
250(万円)÷ 16(万円) = 15.625
小数点以下は切り捨てなので、15です。
これに12をかけると
15 × 12 = 180(ヶ月)
180ヶ月で返済するプランになります。
「金額を割賦金の基礎額で割った数」がそのまま、「支払い年数」になるみたいですね。
そうするとひとつきあたり14,000円の返済になります。
ただ、利子の計算はしていませんので、利子が発生する第二種になると、また月々の支払額は変わってきます。
進学資金シミュレーター
進学資金がどの程度になるのか、また、それに合った奨学金はどれを選べばいいのかという事をシミュレートしてくれるサイトです。
まとめ
奨学金は学びたいという人への支援であるはずですが、正しく理解しないと将来苦しくなってしまう事にもなりかねません。
ただ、日本はお金に関する教育というものが、実は弱く、それによりお金を借りることの危険性を認識しづらいのかもしれません。
加えて、奨学金を借りる借主は、まだ学生で、将来の稼ぎがどうなるかわからないところも、少し問題があるかもしれませんね。
次回は、奨学金の返済がうまくいかない場合の対処法を見ていきましょう。