創作というのは、アイデアを出すまでが一番大変で、振り返るとなんでこんなものを出すのに何時間もかかったんだろうと思ったり、しかもそれが採用されなかったりしてへこんだりするわけです。
週刊連載のマンガ家の方々は毎週面白い話を考えていてすごいなぁと思う事ばかりです。
で、今回は、マンガのHUNTER×HUNTERをお手本に話の作り方を見ていきたいと思います。
ストーリーのアイデア出しの参考になればと思います。
Contents
HUNTER×HUNTERとは
主人公のゴンがプロハンターを目指して冒険するアクションバトルマンガ!ではありますが、プロハンターには割と序盤でなれてしまうので、その後は仲間たちと気の向くままにいろんなところに出かけていっているお話が続きます。
HUNTER×HUNTERとは冨樫義博先生の描くマンガで連載開始は1998年です。
20年以上も連載しているので大作になっているのではと心配するところですが、休載も多くて、むしろ休載が明けて連載することがニュースになってしまうほどです。
こんなに休載と仲の良いマンガは他にないですね。
ストーリーが面白い
どこの評判を見ても、HUNTER×HUNTERはストーリーが面白いといわれていますね。
最近の話は少し複雑になりすぎてじっくり追わないとよく理解できないなんてことがありますが、細かい考察はおいておいても、どんでん返しの積み重ねが読んでいて気持ちがよく感じられます。
話の作り方を見てみる
オークション編以降はストーリーがち密になっていますが、それは全体の流れを考えておいて、話を進めているわけです。
このストーリーの作り方は難しいので、序盤のほうの話の作り方を見ていきましょう。。
対立軸と+αの意見
序盤の方の話は、「AにするかBにするか」という話をしていて、最終的には主人公のゴンがそれ以上の意見や回答を出して話を締めくくったり、問題を解決していきます。
これは、「AにするかBにするか」という問いを出した時点で、マンガの中のキャラも、読者も正解はこのどちらかにあるという思い込みが発生しています。
むしろ、登場人物がこの中から選ばなければならないと考えていることで、読み手としても選ばなくちゃいけないんだなと思っちゃうんですね。
キャラに感情移入していればなおさらです。
また、AかBかと問われているのに、それ以外の答えを出すという事が心理的に抵抗があることも関係します。
思うに、テストなどで3択問題があったとすると、必ずその中に正解がありました。3択が提示されて、もしその答えが全部間違っていた時に、「この3択はすべておかしい」という結論を出せる人はなかなかいないでしょう。
ルールを破っている気になりますからね
提示された選択肢以外を出すのはインチキ臭いですが、それがルール破りになっていなければ、納得とともに、驚きと面白さを読み手に与えてくれます。
全てを提示しない問題作り
問題を出すときに、全てを語らないところがポイントです。
出すのは、最低限のルールだけ。
そのルールだけ守っていれば、それ以外はOKってやつです。
この最低限のルールだけを出すというのは、カイジのエスポワール編の限定ジャンケンの時もそうでした。
カードを使って勝負をして勝ち負けによって星を移動する。
使ったカードは台の中に入れる。
星をすべて失ったら別室行き。
これ以外の星の売買、譲渡など、カードの譲渡などのルールは特に語られなかったですね。
語られていないけれど、問題はない。
こういう隠れたルールを見つけ出したり、考え出したりするところに面白さが詰まってたりします。
HUNTER×HUNTERでも、名言化されていない部分の解釈をどうするかってところが面白かったりします。
実際の場面
実際のマンガの場面ではどうなっているのかを見ていきましょう。
No003 究極の選択
この話の中で提示される問題の条件は以下の通り
a.制限時間は5秒
b.1か2で答える
で、問題は次の通り
息子と娘が誘拐された
1人しか取り戻せない
1.娘
2.息子
どちらを取り戻す?
まず、この2択に答えがあるのかというところで悩むのですが、レオリオはブチギレて最初から考えません。
クイズのトリックに気が付いたクラピカが答えに気が付きます。
答えは「沈黙」
1でも2でもなく、それ以外の答えをはじき出しています。
1か2で答えるという条件の所が「1か2のいずれかを答えなければならない」という条件だったら、この問題は成立していないです。
でも、条件に他の答えの余地があるところを残しておくところで、解答の幅を広げていますね。
で、構造的にはこんな感じになっていて、おばあさんの問いは1か2で答えるものですが、その答えの枠を飛び越えたクラピカが、枠を破って回答をしているイメージですよね。
クラピカの視点沈黙で答える
おばあさんの問い1or2で答える
やれやれ、これで一件落着!と思っていたら最後にゴンのひと言
どうしても答えが出ないや
って言葉で話しが続いていきます。
もし 本当に大切な2人の内一人しか助けられない場面に出会ったら・・・どうする?
という答えで、ゴンがおばあさんの問いを別の視点でとらえていることに気が付きます。
クラピカの視点沈黙で答える
おばあさんの問い1or2で答える
読者も含めておばあさんの問題もその解答もハンター試験に受かるための問題として捉えていましたが、ゴンは自分の問題として考えていたという別の視点を持っていました。
ここで、別視点を持っている事に驚かされ、さらにゴンの言っていることに共感が出来るので、納得して満足して話を読み終えることが出来るのです。
クラピカの回答の時点で、読者としてはすっきりしていたはずですが、2段構えで枠を破るという構造で、より満足度が高くなっています。
No.022 最後の問題
これははっきりと2択問題ですね。
条件は以下の通り
a.残り時間は1時間もない
b.現在人数は5人
c.「長くて困難な道(所要時間45時間)」か「短くて簡単な道(所要時間3分)」を選ぶ
d.短くて簡単な道を選ぶときは2人は残らないといけない
このふたつを選ぶかどうかという2択に注目が集まり、「短くて簡単な道」を選ぶしかない。
とすると、じゃあその短くて簡単な道を行くための3人はどうやって決めるの?というところに意識が持っていかれます。
ゴールに現れた時の演出がまず3人を描写しているので、3人が短い道を通ってきたんだな、というある意味予想通りの結果になっているわけです。
でもそのあとにレオリオとトンパが現れて、5人が揃いますが、「短くて簡単な道」を選んだはずなのにどうやって?と疑問符が生まれます。
5人がとった行動は、「長くて困難な道を選んで、壁をぶち抜いて隣の短くて簡単な道へ抜ける」
長くて困難な道
短くて簡単な道
長くて困難な道を選んで壁をぶち破る
提示されていた二つの選択肢のさらに上を行く選択を出しています。
ここで、意識のかせになっていたのは、選んだ道をそのまま進まないといけないという思い込みです。
扉に入る二つのルート以外のゴールへ向かうルートはないと思わせられていますが、扉へ入って、かつ別ルートを切り開くという視点が秀逸ですね。
No.002 嵐の出会い
ここでは問題という問題はないのですが、船から落ちそうな船員を助けるために3人がとった行動がおもしろいです。
前半の自己紹介でレオリオは「金金金!」と守銭奴キャラになっていましたが、船から落ちそうな船員を助けるためにいち早く動き出すところで、ただ金金と言っているキャラではないという、それまでのイメージを覆させる行動に面白さを感じます。
その後に、船員を助けるためにクラピカとレオリオが助けようとダイブするわけですが、自分が落ちないように、船の柵にしがみついています。
これは、船員を助けたいけれど、まずは自分の安全を確保という、至極まっとうな考えに基づいています。
リアルでも、救助する人は、要救助者よりもまず自分の安全を確保しなければならないので、誰もがおかしいと思いません。
そこで、そんな自分の安全を気にしないで飛び込んで船員さんの足をつかみ、そのゴンの足をクラピカとレオリオがつかんで無事救助することが出来ました。
自分の安全を確保するという常識から外れた行動に読者はワクワクしています。
こうだろう、と思って考えていた行動とは違う事をする意外性に面白さを感じてますね。
この考え方を利用して話を作るとしたら
ある種の問題を提示して、それ以外の視点をもって問題にあたるという方法で、面白い話は作れそうです。
捨て猫を題材にした話
例えば、捨て猫を拾うかどうか。
捨て猫を拾うかどうかというのは、なんとなく美談にされそうな話なので、結構いろんなマンガで扱うことがありますよね。
捨てられた猫を拾うかどうかという問題では、捨てられた猫の命を助けたいという視点で見ているわけですが、捨て猫問題というのは、つまり、捨てる人がいるという視点もあるわけです。
捨て猫を拾う
↓
手に負えなくなる
↓
捨て猫を拾った人が結局猫を捨てる人になる
というストーリーを作ることもできます。
ちょっと悲しい顛末ですが・・・。
これは、捨て猫に対して二つの視点があったからできる話の流れですよね。
パチンコを題材にした話
パチンコもまぁギャンブルとして扱われていますが、ギャンブル視点だと、勝つか負けるかという話になります。
どう勝つか、いかに勝つか、という事が主眼になりますが、勝つか負けるか以外の視点で見つめると、話が膨らみます。
勝つか負けるか命がけの勝負
↓
なんとか勝利!
↓
でも、人生(時間)を無駄にしているよね
みたいな感じですかね。
ギャンブルで得るお金の価値と、ギャンブルに費やしている時間の価値は一緒ではないのではないか、という視点です。
他の話の流れにすると、ギャンブルに勝つことは話の展開では面白いですが、でも実は負けていた
みたいなストーリの流れだと、話の展開の切り返しが効いています。
まぁ、これはカイジのパチンコ編で、遠藤がぼったくり金利を用いたことで、大勝ちしたけど、実はそこまで大きく買っていなかったという話の展開に用いられてます。
逆パターンとして、パチンコじゃ負けているけれど、人生では勝っているみたいな話の流れもできます。
毎日パチンコ屋で負けて帰っていく
↓
大丈夫か
↓
事故のあとのリハビリのために運動を兼ねてパチンコ屋に通っていた
パチンコをするという行動が、ギャンブルとしてだけでなく、運動をするためだったという目的を果たしていたという展開なら納得して受け入れられますよね。
まとめ
というわけで、今回は話の作り方を見ていきましたが、AかBかの対立軸での解決を見せつつ、別視点でのいけんを絡ませると話を作りやすい、というお話でした。
マンガなんてそんなに理論立てて読むもんじゃないとは思いますが、ストーリーやアイデアを考えることがよくある人は参考にしてみてくださいね。
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