骨髄バンクから骨髄提供のお願いの連絡が来ました。が、諸事情により提供を断念することにしました。
今回は骨髄の提供について考えてみたいと思います。
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骨髄バンクとは
骨髄バンクは以下のようなものです。
白血病などの血液疾患の治療として造血幹細胞移植(特に「骨髄移植」)が必要な患者のために、血縁関係のない健康な人(非血縁者)から提供される骨髄液や末梢血幹細胞を患者にあっせんする仕組み、およびその業務を担う公的機関。
出典: ja.wikipedia.org
骨髄移植が必要な人のHLAの型と、合った登録者をあっせんする機関。
HLAは白血球の血液型のようなもので、両親からは1/4、血縁関係者からは数%、血がつながっていない人からは数百人~数万人に1人しか型が合わない。つまり、型が合う人を見つけるのに大変苦労するので、型を登録しておいて、合えば提供のお願いをするという流れですね。
ドナー登録は、はるか昔に
ドナー登録は個別でやっている場合もありますが、献血ルームで一緒にドナー登録も行っている場合が多いので、献血ルームで登録するのが早いかと思います。
献血したついでにドナー登録
ぼくがドナー登録したのは、記憶がおぼろげですが、10年近く前に献血しに行った際についでのような感じで登録しました。
ドナー登録には採血が必要らしいのですが、献血の時に一緒に検査したりでまかなえるので、ついでに登録という事が出来るのだと思います。
骨髄バンクの単品登録よりも、献血のついでが便利かもしれませんね。便利と言いますか無駄が少ないと言えます。
日本骨髄バンクのHPで受付窓口を案内しているページがありましたので、そのリンクを下記に貼っておきます。
日本骨髄バンク 受付窓口案内
長岡市の千秋の献血ルームにて
登録した場所は新潟県長岡市にある千秋の献血ルーム。リバーサイド千秋センタープラザ2階にあります。そこで個人情報を記入して登録しましたが、骨髄バンクと日本赤十字では情報が別々に登録されているので、献血の登録住所を更新しただけでは、骨髄バンクの情報は更新されないんですね。
今回は、新潟の実家の方に骨髄バンクから資料が届きました。ぼくは現在は関東で暮らしているので、こちらに届けてくれればありがたかったのですが、仕方ないので新潟まで取りに帰りました。
骨髄バンクからの資料
実は資料が届く前に登録しておいた携帯電話の方にショートメールが届きました。
骨髄バンクからのメールで「資料を送付したので見てください」という旨のメールでした。
その後、実家から「骨髄バンクから何か届いた」という連絡があったので取りに帰ったんですね。
こういう紙袋が届いて
ドナーのためのハンドブックが、同梱されています。
・ドナーのためのハンドブック
・返信用封筒
・返信回答用の書類
中身としてはこんなものですね。
「ドナーのためのハンドブック」の中身
「ドナーのためのハンドブック」の中身は、
・骨髄バンクの説明
・治療にあたるまでの流れ
・骨髄採取(または末梢血幹細胞採取)の方法
・その他の事項
・費用と補償
・骨髄提供などの統計資料
が詳しく説明されています。
全部で75ページほどありますが、わかりやすく説明されているので、読むのはそれほど大変ではありません。
日本骨髄バンクのHPに「ドナーのためのハンドブック」のPDFが公開されていましたので興味がある方は、リンク先から閲覧ください。
ドナーのためのハンドブック(リンク先にPDFへのリンクがあります。)
提供するか否か
ハンドブックを読んだ時点では、提供したいと思っていました。前述のように合致する確率はかなり低いです。数万人に1人なら全国探せばわんさかいると思うかもしれませんが、骨髄バンクに登録している人数はおおよそ50万人程度という事で、50万人の中から、数万分の1を探すとなると見つからないことが多いかもしれません。
せっかく適合したので、人の役に立ちたいと思っていましたが、提供のためのルールがあってそれが提供を阻むことになるのです。
家族の同意が必要
ここでいう家族とは、独身なら両親、結婚していれば結婚相手の事を指します。
ぼくは独り身なので、家族と言うと親の事になります。
この家族と一緒に医師の説明を受け、家族の承諾を得る、ということが骨髄提供のルールになっています。これは臓器提供の場合でも同じで、家族からの承諾を得てから臓器提供を行います。本人だけの意志では、臓器提供ができません。
骨髄バンクでも同様で、やはり家族が「いいよ」と言うまでは、本人が「OK」と言ってもダメなんですね。
ぼくは、あまり物事を真剣に悩まないせいか、割と軽い気持ちで提供を考えていましたが、親からすると万が一を考えてしまうようです。
すなわち、死亡事故と後遺症が残るのではないかという心配です。
骨髄バンクを介しての骨髄移植で死亡例はない
骨髄移植によって死亡した例は過去にありますが、それは骨髄バンクが介在していない骨髄移植の場合です。死亡例は4件あり、3つは海外、1つは日本で起きています。
しかし、骨髄バンクを介しての骨髄提供は2万件以上ありますが、死亡事例はありません。このことから、よほどのことがない限り死亡に至る事はないとぼくは考えています。一方で、骨髄提供の術後に後遺症と思われる症状が現れることは何件も報告されていますが、そのいずれも最終的には解消されているようです。
これは長い年月の経験の積み重ねで、万が一が起きないように医療関係者の方々が対策を講じているからです。骨髄提供を望んでいる方を救いたい気持ちもあるけれど、優先すべきはドナーの安全という立場をとっているからですね。
理屈じゃなくて感情
しかしながら、この事実を持って親を説得することはできませんでした。
万が一にも大丈夫、と言っても、今までなかったかもしれないけれど、次起きるかもしれないという気持ちを抑えきれません。
これはどの分野にも言える事ですが100%と言い切れない以上、こうした不安は解消できるものではありません。また、100%大丈夫と言っても、心配がなくなることはないですよね。
「大丈夫だから」と言ってた人が帰らぬ人になるという痛ましい出来事は、探せばいくらでも出てくることでしょう。あるいは、ここ最近では1年の間に医療ミスが報道されることがあります。その事を考えてみても、大丈夫とは思えないという気持ちだと思っています。
子供に何かあったら大変だという気持ちは世の親なら誰しもが思う事でしょう。ぼくは資料を見せながら反対を退けようとしましたが、徐々に「無理かな」と思う気持ちになりました。
今現在も、ものすごく親に心配をかけている状態なのですが、もしぼくに何かあった時につらい気持ちを持って老後を過ごしてもらいたくないという気持ちがあったのです。
それまでは、自分が骨髄を提供すれば人を一人助けられるという気持ちでしたが、目の前で苦渋の顔をしている親を見るとなんだかその気持ちがしぼんでいくようでした。
ここで、「心配しすぎだよ」といって強引に説得する手もあったかもしれません。でも、病気で苦しんでいる人よりも目の前の親の気持ちを優先することにしました。
提供したい気持ちはある
なんだか提供を断っていて矛盾するようではありますが、もし家族の同意が必要ないのであれば、ぼくは提供したいと思っています。データを見る限りでは危険なことはないと思っていますし、後遺症が残っても回復する手段があると思っているからです。
何より、誰かを救えるという事は単純にうれしい事です。
病気というのは人の力ではどうにもできないことがあり、それに苦しんでいる人を助けてあげたい気持ちは誰もが持っているのではないでしょうか。
なので、今回提供できなくて残念に思う気持ちがあります。
きっとぼくのように「協力したいけどルールによって提供できなかった」という人はたくさんいると思います。
医療技術が発達してより簡単で安全に骨髄提供できる仕組みができれば家族の同意なんてものが必要なくなるので、その発展を期待するばかりです。
骨髄バンクの仕組みの不満点
特に協力しなかったぼくが言うのもなんですが、仕組みとして不満がある部分があったので、書いてみたいと思います。
これは、ぼくだけでなく、調べたら多くの人が思っていることだそうなので、いつか改善されたらいいなと思っています。
・診察が平日のみ
・補助手当なし
診察が平日のみ
もし骨髄を提供する流れになっていたとしたら、平日に診察を受けに行く必要があります。これは、ドナーの体調が悪いと手術を行えない、または病気などを持っていると患者に感染してしまうなどいろいろの理由があるので必須の検査です。これが基本的に平日しか行っていないのです。
これは普通に仕事をしている人にとっては有給を使うしかなく、有給がなければ会社に事情を話したうえでの欠勤となってしまいます。そうした事情から診察を受けに行くことが出来ずに提供ができない人がいるのではないかと思いました。
土日でも検査を行うことが出来るようになると、提供者の数が増えるのではと思います。
提供のための手当なし
上の平日の診察のみとちょっとかぶる点がありますが、提供者の善意で提供してもらう事になりますが、それに対する手当というものがありません。そうなると、仕事を休んだ分の給料を賄うことが出来ないことになります。
骨髄提供のための入院時に入院準備金として5000円程度が支給されるようですが、それだけでは見合わないと考えて提供をやめると考える人もいると思います。
ただ、提供に対し謝礼を用意するとそれを目当てとしたブローカーがはびこることになるんじゃないかなと思っているので、金銭を用意できないのではないかとも思います。
日本赤十字社のHPに以下のような問いがありました。
Q.
献血をしたらもっと特典があってもいいと思うのですが?A.
以前は献血にご協力いただいた方に図書券やテーマパークの入場券のプレゼントなどを行っていましたが、2002年に施行された「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(新血液法)の有料採血の禁止条項に基づき、皆様の善意を疑うことにもなりかねないことから、金券など換金可能なものを処遇品としてお渡ししないことになりました。ご了承ください。
出典: www.bs.jrc.or.jp
献血で言うと2002年以降、新血液法により、換金可能なものの提供を止めているので、骨髄提供でも同じような思想ですかね。
金銭のために過度の提供を繰り返すと提供者の健康を損なう事にもつながりますし、それによって得られた血液の質が低下することも懸念されていました。そこで、無理をさせない為に金銭授受の禁止、ですね。
とはいうものの、日本赤十字社も骨髄バンクも提供に際して、何かしらのやり取りがあると思うのですが、そこら辺が明らかにならないと、提供者側としてもなんだかもやもやしてしまいそうです。
感想
骨髄を提供する人としない人がいて、ぼくはしない側になりました。
読んでいる人からすると「そんなことで提供を諦めるなんて」と思われるかもしれませんが、ぼくにとっては大事な事なのです。
全国に同じように提供したいけれど、様々な理由で提供を諦めた方がいると思います。
その方々も当初から「提供しない」と拒んだわけではなくいろんな要因が重なって「提供しない」という決断をされたのかなと思いました。
もし今後、提供のお願いがあった時に、その時の状況によっては提供が可能になるかもしれませんが、一度断ったらもうオファーは来ないかもしれませんね。
その分、他の事で誰かの役に立てたらと思います。
献血に関する記事
http://around40-dt-tokamachip.info/2020/04/03/post-6875/
http://around40-dt-tokamachip.info/2018/09/30/post-284/