ゲームが下手になったらなにが悪い!
かつてはゲームが得意だったぼくも、歳とともに反応速度が遅くなり、シューティングゲームやアクションゲームがやや苦手になってきました。
苦手になったのは、上達するまでの練習に時間をかけられないのもあります。
昔は好きなだけプレイすることができましたから、死にポイントを覚えて進んでいくというやり方もできたわけです。
今は、とりあえずクリアするのが目標になってしまって、コンティニュー使いまくりのごり押しで進んでいくことが多くなってしまいます。
ゆっくりゲームしたいですね。
ゲームは、昔はプレイする前にまず説明書を読むという流れでしたが、最近は説明書を読まなくても序盤にチュートリアルがあって操作方法やシステムを教えてくれます。
割と複雑な操作があるものが多いですが、すんなりと覚えられる事って多いですよね。
今回はゲームをお手本に、教育というものを見ていこうと思います。
Contents
前提として
ドラゴンクエストIは1986年の作品です。
ドラクエ以前にRPGというジャンルは少なく、ほとんどはアクションゲームでした。
RPGを触ったことがない人がほとんどなので、どんな操作方法をして、何をしたらいいのかということをわかっている人はほとんどいないということを念頭においてくださいね。
閉じ込めて理解するまで出さない
目的の提示
ドラゴンクエストIのオープニング。
王の玉座の前からスタートします。
王様との会話から始まり、勇者が何をしたらいいかを示してくれています。
必ず王様と会話をすることになるので、目的を聞き洩らすことはありません。
方法は示さないけれど、ゴールは教えてくれるわけですね。
移動から学ぶこと
王様との会話が終わると勇者は動けるようになります。
十字キーで勇者を動かすことが出来ます。
Bボタンは反応なし。
ではAボタンを押してみると
コマンドが表示されます。
でも、これはなんだ?ということになります。
よくわからないので、まずは歩き回ることでしょう。
しかし、唯一の出口らしい階段に続く道には扉があり、扉の方向にキーを押しても扉は開きません。
ぶつかった効果音が出るだけです。
この効果音が出ることによって、ぶつかっていることを認識できます。
部屋の中にうろちょろしている兵士がいるので、近づこうとすると兵士にぶつかることがあります。
すると、またぶつかった音がします。
加えて、玉座の奥の通路は狭く、うまく曲がれないと通路にぶつかります。
そしてお決まりの衝突音。
これを繰り返すことでいつ衝突音が出るか学ぶわけです。
→この音がしたら先に進めない
その後の発展形として、壁を見たら壁のほうに十字キーを押さないという習性が付き、冒険を効率よく進めることができるわけです。
毎回、壁に向かってぶつかっていたら、クリアするまでにものすごく時間がかかることでしょう。
余談ですが、後年、RPGで壁かと思ったらすり抜けられるという発明がされたために、壁に向かって突進するというプレイヤーは、後年ほど増えたように思います。隠しアイテムがあるっていうなら、そりゃあ壁という壁を押しまくりますとも。
コマンドの使用対象を作る
ファミコンのドラクエIでは、話しかける際に「はなす」を選んだ後に「きた みなみ にし ひがし」と話す方向を選ぶ必要がありました。
部屋の中に4人の人物がいて、王様は下からしか話しかけられませんし、扉の横にいる兵士は左右か、上からしか話しかけられません。
つまり、話しかける方向を変えないと話が聞けず、ここで話の聞き方を学ぶことになります。
話しかけられる4名を配置することで「はなす」コマンドの使用方法を学べる
そして、話した4名のうち、王様はよくわからないことを言うので、残りの兵士から情報を得ることが出来ます。
→ローラ姫の話
1.半年前にさらわれた
2.ローラ姫を助けてくれ
→扉についての話。
1.扉は宝箱の中に入っているカギで開けられる。
2.カギは一度使ったらなくなる。
→冒険の進め方の話
1.城を出ると町がある
2.町で武器防具を買いそろえろ
3.戦いに疲れたら宿で休め
3種類の話が聞けました。
手段があって、それを実行できる対象があり、繰り返すことで手段の使用方法を学んでいます。
自発性を作り、成功体験を重ねる
ここで一番重要なのは扉の開け方の話です。
3つの意味があります。
1.扉の開け方が分からなかったけれど、話を聞いて開け方が分かった。
→扉とカギの扱い方の習得
2.宝箱の中にカギがある
→宝箱は取れるものと認識させる
3.人から情報を聞くことで問題を解決できる(かもしれない)という実例。
→ほかの場所でも人に話しかけて情報を集めようという積極さを持たせる
この兵士の表現としてうまいのは「カギを使ってとびらを開けろ」と言っていない点です。
ほぼ言ったに等しい表現なのですが、勇者(=プレイヤー)が「宝箱は取れるんだな」と自発的に考えることと、
行動させることにつながるような表現で行動を促しているのです。
明らかに用意されたルートだとしても、自力感や達成感を持たせるためには自ら判断させて小さいことでも成功を積み重ねること
が重要なのです。
重要でも緊急性のないものは後回し
二番目に重要なのは冒険の進め方の話ですね。
お城の隣に町があるのは慣れればわかりますが、町のグラフィックは1マスしかないので、町だと気付かない人もいるらしく、お城から出たらそのままフィールドをてくてく行ってしまう人もいたそうです。
武器と防具に関しても、現実世界に武器屋なんてそうそうないので、「武器を買う」という発想がまずなかったことでしょう。
それを改善したのか、ドラクエ2では「どうのつるぎ」がすぐ手に入るようになっていましたね。
そう考えると、ドラクエ3でスタートからいきなりパーティの編成を行うようにしても誰もつまづかなかったのはプレイヤーのレベルが上がった証拠でしょう。
話を戻しますと、武器を買いそろえたり、宿で休んだりすることは重要なことですが、すぐに覚えなくても大丈夫なようにゲーム作りがされています。
お城の周りの敵は、遠出しなければ「スライム」と「スライムべス」が出てくるばかりで、素手で裸でも倒すことが出来るからです。
そして、死んでしまってもゲームオーバーにはならず、王様の前まで戻されるだけです。所持金が半分になりますが、スタートしてすぐはそんなに大してお金を持っていないので、損害は少ないでしょう。
そうこうしているうちに、装備の重要性を覚え、宿屋で回復すれば全滅しないのでお金が節約できることに気づいていきます。
装備をしなければ即死という状況ならば、何をおいても武器の買い方を教えたでしょうし、宿屋の使い方もすぐに出てきたでしょうね。
教える側が、教えることに優先順位をつけて教育していくことが、混乱を抑え効率よく学ぶことにつながります。
朝からみっちり8時間もやるような研修では朝やったことは忘れてしまうものです。
頭の片隅に残す
ローラ姫の話は興味の持続を狙っての仕掛けなのではと思います。
姫の話を最初に出しておくことで、頭の片隅に「ローラ姫はどこにいるんだろう」という気持ちが植え付けられます。
ローラ姫を救出しなくてもゲームはエンディングを迎えることが出来ます。
ローラ姫を救出しないでゲームクリアしたプレイヤーは「ローラ姫探し」として、もう一度プレイする目的ができるわけですね。
そして、ローラ姫を救出して無事クリアしたと思いきや、「ゆうべをお楽しみにできる」という謎の情報によって、みたび冒険の旅に出かける勇者がいるかもしれません。
長期的には達成してもらいたいが力量がない場合、目標を掲げることで意識を向けて忘れないようにしてもらうのも大事ですね。
コマンドの実践
部屋の中には宝箱がありますが、これはコマンドの「とる」で中身を手に入れることができます。
「しらべる」では取れないんですね。
これは後のシリーズでは「しらべる」で宝箱を取れるようになり、探索がスムーズになりました。
宝箱は3つあり、3つ取りたいのが人情でしょう。
賭けてもいいですが、3つ全部開けない勇者はいないのではと思います。
宝箱をとるなら近場からだと思いますが、玉座の手前にある宝箱は「120G」と「たいまつ」です。これをとっても扉が開かないので後ろの宝箱を取りに行く羽目になります。
手前の宝箱に「カギ」が入っていたら、さっさと出て行ってしまう勇者がいるかもしれません。
意図的に後ろにカギを配置することによって、3回宝箱を開ける機会を作っているわけです。半強制的に。
反復で行う行為はなかなか忘れません。
「かいだん」は毎回使うことになるので、一回だけになっています。
お城から出るために、毎回何度も階段を下りていたら大変ですからね。
2以降は、階段は自動で上り下りができるようになっているので、便利になりました。
「とびら」コマンドは、初回で使って以降、次に使うのはかなり先になります。
実践機会は少ないですが、情報として疑似体験できるので、回数が少なくても大丈夫なのではと思います。
必要なことは経験させて覚えさせる。
経験させる機会が少ないが、大事なことは文章で残す
ということがポイントでしょう。
まとめ
1.目的は最初に提示
2.必要なことは実践させて覚えさせる
3.必要な技術を獲得するまで繰り返させる環境を作る
4.習得してもらうことに段階を設け、学び方を配慮する
5.すぐに習得できないことは意識を向けさせる
本当にこのような意図があったかは定かではありませんが、それでも様々な配慮によって、新米勇者がスムーズに冒険に出かけることが出来たことは事実でしょう。
教育する立場になったことがないのでわかりませんが、ある程度行動を予測して、「ここで詰まるんだろうな」という詰まりポイントやくじけポイントをうまく回避させる配慮が必要なのではないかと思います。
ぼくは、リムルダールで鍵屋を見つけるまでカギの事は忘れていましたからね…。
参考動画
ゲームの仕組みを解説されている方で、面白さの仕組みなどを解説されています。
今回のことを書く上でいろいろ参考にさせていただきました。
ゲーム好きの方にはぜひ見ていただきたい動画です。
昔プレイしたゲームで新しい発見があるかもしれませんよ。
それでは今回はこの辺で。