マンガ【惡の華】これが青春?! 絶望を抱えた主人公の挫折と精神の成長を描く青春物語の感想とレビュー・ネタバレあり
シャルル・ボードレールの悪の華はどれくらいの人が知っているでしょうか。
悪の華の詩集を読み込む主人公・春日の幻想と苦悶の中で揺れ動く彼の自我の挫折と構築の物語、押見修造先生の【惡の華】を紹介します。
Contents
こんな人におススメ
惡の華はこんな人におススメです。
- なんだかよくわかんないけど普通じゃない話を読みたい人
- マゾの人
- 学生時代に「俺、ちょっと歪んでいたんだよね」と思っている人
wikiに載っていた記述で申し訳ありませんが、これは青春マンガらしいんですよね。
青春マンガかぁ、甘酸っぱい展開が目白押しなんだろうなぁ、という考えはすぐに捨ててください。
まぁ、一巻の表紙からしてただ事ではない感じがしています。
誰でもとは言えないかもしれませんが、若い時に「自分は何者なんだろう」と考えることがあります。
主人公の春日は忘れ物の本を取りに戻った際に、偶然目にしたクラスメイトの女子の佐伯さんの体操着を思わず持って帰ってしまいます。
その行為をネタに、クラスメイトの仲村さんから脅しをかけられ行動を共にしているうちに、こうありたいと思っている自分と、自分の中に眠っていた自分の本性の差に葛藤して徐々に気持ちや行動が破たんしていくことになります。
これを書く前に自分の中で感想が固まっていなかったので、他の人のレビューなどをあさってみましたが、意外と共感したという人がいたりして、ああ、わかりあえるんだ、と思いました。
特に、最近公開された実写版【惡の華】の公式サイトで監督の井口昇さんと原作の押見修造さんの対談が掲載されていますが、
「惡の華」ほど酸素のように体に染み渡って理解出来て感動した作品は初めてだったんです。僕は普段マゾをやっているので、春日の行動の一つ一つが心底よくわかりますし、女の子のキャラクターが全員魅力的でツボに入りまくったんです。
めっちゃ世界観理解してる・・・!!
最初の井口監督の断りに僕は普段マゾをやっているのでとあるので、マゾの方ならすんなり理解できる世界観かもしれません。
また、学生時代に自分は心に闇を抱えていたという人も読んでみて、どちらの闇が深いかを比べてみるのも面白いかもしれません。
序盤はギャグで中盤は暗い情熱
好きな女の子の体操着を盗んで、そのあとその体操着を着用して当の本人とデートする、なんてシチュエーションがあったら笑っちゃいます。
よくよく考えると、実は春日はそんなに大したことをしてないのです。体操着を持って行っちゃうのは「窃盗」にあたるかもしれませんが、つい出来心でやってしまうのは子供の頃ならわからなくもないです。
誰かの物を無断借用とか心当たりないですか?
そのついやってしまったことを正常に戻すべく奮闘する姿は必死なんだけど、笑っちゃうところがあります。
これは、作画による部分もあって、4-6巻と比べると、最初は顔に落ちる影が少ないんですよね。まぁ、落ちたりもしてますが、そこまできつくない。また、目が大きく描かれていて、目が大きいと子供っぽく見えるんです。
でも、4巻以降になると、それまでよりも全体に対しての目の大きさが小さくなるので、大人の雰囲気が出てきてシリアスさが増していきます。
1巻あたりの顔のバランスのままだったら「子供のざれ言」になりますが、大人の外見になってしまえば「分別がある年齢なのにこの行動」というある種の狂気が感じられるようになります。
この暗い情熱が、どこからくるのか、どこへ向かうのかがちょっとわかりづらいんですよね。
仲村さんの悪態は「好き」の裏返し?
好きな子をいじめてしまう小学生の心理は広く知られているところです。「好き」と言えないから、代わりにいじめて関心を持ってもらうという作戦です。
ただし、仲村さんの場合は表現が過激すぎて本当に好きなのかわからない。
「好き」という言葉は出てきませんし、そもそもポジティブな言葉もあまりない。
ところが、言葉に反して嬉しそうな仲村さんというのは割といろんなところで見かけます。
最初の自転車で二人乗りするところ。作文を書いてきてとお願いするところ。春日に体操着を着せているところ。
ざっと見返してみると1巻だけで結構あります。
仲村さんは自分の事を「変態」と表現しているので、自分の変態と釣り合う変態を見つけたことによる喜びなのかもしれません。ただ、発している言葉がすべて春日を貶めるものではなく、自分に関心を持ってもらうための手段とみるとなんだか仲村さんが超過激なツンデレ娘に見えてきてしまい、「仲村さん好き」という読者を増やしてしまっているのかもしれません。
根拠はないですけどね。
アニメは違った味わい
2013年にアニメ化されています。
惡の華のアニメが他の原作付きアニメと違うのは、作画が全く違うという事です。キャラクターが命といってもいいマンガで、キャラクターの姿が違うというのは結構衝撃的です。
放送当時は絵柄が違いすぎて、マンガは好きだけどアニメは見るのを止めたという人が結構いた印象です。
実写を撮影する
↓
その実写を元に作画をする
というロトスコープという方法で作成されました。
当然、リアル寄りになってしまうのですが、それが生々しさを増幅していて、マンガとは違ったおもしろさです。
ちなみに、春日を担当している植田慎一郎さんはジュノンボーイです。
春日めっちゃイケメンやん。
序盤はそんなイケメン具合を感じませんが、アニメの後半は加速度的にイケメンポイントが上がっていきます。12話の春日はかなりイケメンですよ・・・。
エンディングテーマがまた暗い雰囲気
音楽ユニットのASA-CHANG&巡礼が過去にリリースした「花」のセルフカバー曲ですが、このアニメのために書き下ろしたんじゃないかってくらい不安になる曲です。
1話のラストでこの曲が来て、話の結末に暗い未来しか予想できない人が多くいたんじゃないかなと思います。
実写映画もあります
まだ観ていませんが、予告を見るとなんだかポップになっちゃった感じ。これで映画館の中では、暗い話が展開されていたら予告詐欺になりそうなので、この雰囲気のままですかね。
おわりに
惡の華は、はっきりとした答えが描かれていないので、表現の解釈について、ネット上で様々な人が考察をしています。
本編を読み終わった後に、そんな考察を見て回るとまた深く作品の世界に入っていけて、楽しめると思いますよ。
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