啄木鳥探偵處(きつつきたんていどころ)の第1話「こころよい仕事」のネタを解説
今回は啄木鳥探偵處1話、アニメ表示では第一首のネタを解説していきます。
個人的な意見になりますので、間違いがあるとおもいますがよろしくお願いします。
第1首 こころよい仕事
親友であった彼が死んでから10年 | 話の冒頭で金田一京助が語る言葉。
アニメの放送開始は2020年4月13日ですが、これは本当に石川啄木と同じ命日。 1886年(明治19年)2月20日 – 1912年(明治45年)4月13日) |
颯爽としていた友 嘘つきでやんちゃだった友 泣き虫で友情に厚く、独りよがりだった友 酒のみの女好き ロマンチックなサディスト 先見の詩人 そして天才歌人だった友 |
お金の無心に関してはあんまり触れてなかったりします。 |
蓋平館 | 金田一が入っていく建物。
【史実】最初は赤心館に入っていた啄木ですが、お金がなくて、この蓋平館に引っ越してきました。 蓋平館は現在では「蓋平館別荘跡」となって、石碑が残るばかり。以前は「太平館」なる建物があったようですが、今はアパートになっているようですね。 |
啄木に金田一が差し出したマッチとたばこ | 燐寸とはマッチの漢字表記のこと。
煙草の方は村井吉兵衛が手掛けたタバコのCAMELIA。 が、物語の時代は明治42年から明治44年までなので、昔に買っていたたばこを長く吸っていたと思われます。 カメリアは色の名前を指し、椿の花のようなピンクがかった赤を指します。 長楽館という京都の菓子屋さんが、このタバコを模したお菓子を販売している模様。 中身はお菓子ですが、外箱はこのタバコの外装をまねています。 上のリンクから長楽館様の商品ページにとべますよ。 |
机のガスランプ | まだ電気が普及していないので、明かりはガスランプ。 換気をしないと危険な場合があります。ガスランプはそれほど明かりが強くないので、点けても暗いことが多いそう。 |
ハイネの「ブッフ デル リーデル」じゃないですか | クリスティアン・ヨハン・ハインリヒ・ハイネ(Christian Johann Heinrich Heine, 1797年12月13日 – 1856年2月17日)のこと。
ブッフ デル リーデルはBuch der Liederと書き、日本語では「歌の本」と訳す。 啄木はドイツ語の勉強を始めた頃に日記にこの「ブッフデルリーデルを辞書を使って読んでいる」と書いていたようです。 |
こころよく 我にはたらく仕事あれ それをし遂げて 死なんと思ふ |
この歌を詠んだ当時の啄木は、小説家を目指していましたが作品が評価されておらず、文章の校正などを行って給料を得ていました。
つまり、やりたい仕事では無い仕事をしていたという状況。 こころよく我にはたらく仕事あれ それをし遂げて死なんと思ふ という、今はやりたくないことをしているという、現状を悲しんでいる気持ちと、けれど、いつかはやりたいことが出来るように、歌が認められるようになるぞ!という前向きな気持ちも表している歌。 |
オープニング中の歌 浅草の凌雲閣のいただきに 腕組みし日の 長き日記(にき)かな |
浅草の凌雲閣の展望台で、腕組みをしながら今後の事を考えていたけれど、それに対する解決策は何も出ない。 日記の内容も長くなった原因かもしれませんが、啄木はローマ字日記という、ローマ字で文字を表現する日記を書いていました。 そのため、普通に書くよりも文字数が多くなり、長い日記になってしまったとも言えます。 凌雲閣は1話では開始から4分20ほどの所にあるシーン。 現存していません。 ローマ字日記をおこして掲載しているサイトがありましたので、リンクを貼っておきますね。 |
オープニング中の歌 さりげなく言ひし言葉はさりげなく 君も聴きつらむそれだけのこと |
さりげなく言った言葉を、あなたはさりげなく聴いていた。でも、それによって何かが起きたりしなかった。 ただそれだけのことだったんだ。言葉を発する、相手はそれを聞く。という事が行われた、それだけのこと。 啄木が何かしら意味を込めたものだった言葉が相手の耳には入ったけれど、その意味は伝わらなかった。ちょっと片思い風味の歌。 |
オープニング中の歌 ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中そを聞きに行く |
停車場というのは駅のこと。
駅の人ごみの中に、自分の出身地のふるさとの訛りが聞こえてきたから、わざわざその人ごみの中に入ってなつかしい訛りを聞きにいく。 啄木は上京していて、地元の岩手県からは離れたところに住んでいる。 そんな状況の中で地元訛りが聞こえたらなつかしさに震えてしまう。 |
オープニングの歌 はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る |
働いても働いても、お金はさほど手に入らず、裕福とは程遠い。そんなだから生活も楽にならない。
どうしたらいいんだろうと手をじっと見る。という状況を歌った歌。 手というのが、詠んだのが啄木なので、啄木の手を表していますが、その他の世間一般の労働者たち、一生懸命働いている人たちも手を見るという事が、自分のことのように思え、共感を生んだ歌。 |
オープニングの歌 興来(きた)れば友なみだ垂れ 手を揮(ふ)りて酔漢(よいどれ)のごとくなりて語りき |
啄木と金田一は、アニメ中にもあるように連れだって飲みに出かけていました。
そこで、友、つまり金田一が語ることに夢中になってくると、涙を流しながら、酔っ払いのようになって将来のことや周りの情勢の事を熱く語っていた様を歌っています。 仲良しだったんだなぁと思わせる歌。 |
オープニングの歌 よく笑ふ若き男の死にたらばすこしはこの世さびしくもなれ |
若き男というのは啄木自身のこと。
啄木はよく笑う人間だったし、周りにいる人間も笑わせる、いわゆる明るい人でした。 でも、自分の才能が認められない、つまりは才能なんてなかったんじゃないかという発想にとらわれてしまうと、自殺という言葉が思い浮かんできます。 もしこの自分が死んだら、自分の周囲の人は悲しんだとしても、少しは世の中でも寂しがってくれるのだろうか? でもこんな(才能のない)男の事を思って寂しがってはくれないのだろうな。世の中は変わらないのだろうな。 自分の状況と世間との関係を客観視している歌。 |
オープニングの歌 いつしかに情をいつはること知りぬ髭を立てしもその頃なりけむ |
自分の気持ちを偽るという事をするようになった。ひげを生やし始めたのもその頃だった。
という歌です。 これに関連している歌があって わが髭の下向く癖が 生やしているひげが、下向きになるのが腹立たしい。 って歌ですが、この時に生やしているひげを生やしたきっかけが「いつしかに情を~」の歌だったりします。 |
すっかりごちそうになってしまいました。 | なんとなく、この日だけごちそうになったというイメージがありますが、遊びの金はほとんど金田一が出したりしてます。 |
ちと髪をなでつけねえと出会茶屋 | 啄木の創作ではなく、当時の世相を反映させた川柳だという事です。
出会い茶屋は、お茶を飲むところではなく、連れ込みをする寝所、ラブホテルといった形態のところ。 上野の不忍池のあたりに十数軒あったそうです。 事に及んで、いざ出る時に乱れたしまった髪を撫でつけて整えなくちゃなぁというのと、「ちと」っていうのがおそらくですが、「乳(ち)」とかけていて、「出会茶屋に行くんなら胸とと髪の毛を触ってこないとな!ぐへぐへ」みたいな勢いもあったんだと思います。 |
文明開化から40年 | 作中は明治42年~明治44年頃の設定ですが、そこから40年前というと、明治になったばかりの頃。
この年から文明開化!というような時期はなく、文明開化というのはやや幅のある時期を指す言葉。ですが、啄木の中では明治になった=文明開化したというとらえ方のようです。 もっとも、啄木の生まれが明治19年で文明開化が起きた頃には生まれていなかったので、その頃だろうというイメージで話しているものかと。 |
警察官の装備 | 帯刀している描写。 ここで下げているのサーベル。 上級警察官しか帯刀が認められていなかったが、明治16年から下級警官もサーベルを持てるようになった。 また、上からのアングルの時に肩に見える、星マークと赤ラインは肩章で、明治41年から付くようになったので、明治41年よりあとということが分かります。 まぁ、作中は明治42年から明治44年の間とされているので、それを裏付けた格好になりますね。 |
手紙 | 長方形の何かがあったことはわかるが、「手紙」と断定するには根拠が薄い。
1.長方形のもの を考慮すると手紙になると思われる。 3の厚みがないものという条件は、アニメ画でいうと、被害者から左上方向に血しぶきが飛んでいた。 この時、厚みがある場合は、血しぶきがそのものにさえぎられて、左上まで届かない可能性がある。 だが、きちんと(?)血しぶきの形が崩れることなく左上まで飛んでいるので、厚みがないものと推測される。 |
岩井三郎 | 日本で初めて探偵事務所を開業した人物。 「岩井三郎事務所」(現・株式会社ミリオン資料サービス)創業者。-wikipediaより |
達吉と小栗の関係 | 男色は江戸末期、明治初期から違法とされて、あまり大っぴらにされなくなってきていた。
それでも、男性が集まる集団の中では多少は発生していた模様。 |
野村胡堂が読んでいる萬朝報(よろずちょうほう) | 日本にかつてあった日刊新聞。 1892年に発刊。1940年に廃刊。 名前は「よろず重宝」のダジャレがもと。 |
陸軍軍医の森林太郎先生 | 森鴎外。 森林太郎は本名で、陸軍軍医も実際の経歴。 |
小腹が減りませんか? | お金がないので、何か食べて帰りたい啄木だが、「おごれ」というのは憚られたので、誘い水をだしている。 |
停車場のあたり | 現在のお茶の水駅あたり |
本を売って家賃を工面 | 赤心館にいたときに、家賃滞納で追い出されそうな啄木の代わりに本を売ってお金を工面し、蓋平館に引っ越したのであるが、アニメでは最初から蓋平館に住んでいるので、引っ越しの描写はなく、お金を工面したところだけ。
史実では30円を工面したそうであるが、アニメでは40円になっている。 |
未練を断ち切って学問に打ち込むいい機会かなと思ってね | 金田一も文学を極めんとするひとりで、啄木のように文学で身を立てていきたいと考えていた。
けれど、啄木のために自身の文学書を売ってお金を工面しました。 文学書が作家になるために必須ではありませんが、これらを売ったことで気持ちを切り替え、言語学にいそしみます。 後に国語辞典とか出してくれているのですから、今の日本人の言葉の基礎を作ったとも言えますね。 |
死んだらあなた(京助)を守りますよ。 | お金や財産がない自分はこの世では、力になれないが、死んだら、死後の世界であなたを守りますということ。
ネット上だと、「生きてるうちに守れ」の意見が多数。 |
八雲(やくも)立つ
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須佐之男命(すさのおのみこと)が櫛名田姫(くしなだひめ)と結婚する時に詠んだ歌。
結婚する時に雲がもくもくと湧き上がって、それが八重垣のように見え、結婚を祝福しているようでうれしい、という気持ちを読んだ歌。 |
エンディング ゴンドラの唄 |
本編にも登場した、吉井勇の代表曲。 1915年(大正4年)に発表された曲なので、啄木が聞くことはなかった。 |
冒頭で京助が持っていた「悲しき玩具」 | 石川啄木がなくなった後に出版された第二歌集。玩具は「おもちゃ」と読みます。
現在は、一握の砂とまとめられて刊行されていることがほとんどです。 |
蓋平館別荘跡
石碑だけになって少し寂しいですね。
凌雲閣跡地
凌雲閣跡地とされるところにはパチンコ屋があったりしました・・・。
次回
次回は第2話
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