啄木鳥探偵處(きつつきたんていどころ)の第3話「さりげない言葉」のネタを解説
今回は啄木の事を嫌いになる人がいるかもしれませんね。
真面目な人ほど、啄木嫌いになりそう。
解説は個人的な感想ですので、間違いがあればご容赦くださいませ。
第三首 さりげない言葉
新聞縦覧所 |
冒頭の啄木たちが集まっているのは新聞縦覧所といって、公費で新聞を買って、それを無料または有料で読めるようにしている施設。
当時は、一戸ごとに配達するというシステムが出来上がっていなかったので、お客の方が新聞のあるところに集まるというシステムの方が効率が良かった。
「牛乳新聞縦覧菊乳舎」とあるので、新聞の他に牛乳などの飲料もあわせて販売していたとみられる
また、娼婦のあっせんも陰で行っていたという側面もあり、飲み物を売る、菓子を売る表向きの商売をして、売春の隠れ蓑にしていたところもある。 |
テーブル中央のお菓子 | お菓子販売も行う施設だったので、取り出して食べてお金を払う仕組み。
容器の中に入っているのは半月どら焼きのように見える。 餡が白いので白あんかクリームを挟んでいる? |
啄木の後ろの張り紙 | 「新聞縦覧無料の事」とあるので、新聞を読むのは無料のようです。 これは気軽に来れるし、たまり場にもなりやすいですね。 |
萩原朔太郎 「クロ(猫)」が犯人 |
クロ(警察用語で犯人)だから |
吉井 「お女郎を身請け」 |
お滝は女郎屋で働く女郎という身分で、そこから抜け出すためには、身請け金というものが必要だった。
女郎屋にいるという事は大半は借金持ちで、その借金を返して、更に女郎が儲けるはずだったお金を納めるという形でかなりの大金が必要だった。 啄木に色々おごったりとお金に割と余裕のあった金田一でも、身請けするほどのお金をポンと出すことはできない。
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お滝 「私は労咳(ろうがい)なのです」 |
肺結核の事。
お滝がこんこんと咳をしていたのはこのため。 |
啄木 「私が小説で京助さんが鼻の下に毛生え薬を塗っていることを書いたら」 |
鎖国が解かれて、外国人が日本に入ってきた時に、彼らがたくわえていたヒゲは、新しい文化→かっこいいというイメージになりました。
そのため、文明開化とされる明治では、口ひげをたくわえることがおしゃれ、という価値観に染まっていき、その頃の著名人の写真はひげを生やしている人が多いのです。
おそらく金田一は毛が薄い体質で、ひげが濃くなかったので、毛生え薬を塗っていた模様。
毛生え薬を塗る → 積極的におしゃれに取り組む のを知られるのがちょっと恥ずかしいお年頃。
中学生ぐらいから髪型にこだわるけど、こだわっていることを周囲に知られるとなんか恥ずかしい、みたいな感覚かと。
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牛乳新聞縦覧菊乳舎メニュー |
マッチ 1銭
キャラメル 10銭 シベリア 10銭 汁粉 7銭 みつ豆 7銭 ミルクコーヒー 7銭 コーヒー 5銭 牛乳 3銭 優良牛乳 4銭 玉子入牛乳 5銭 チヨコレイト 7銭 ココア 5銭 紅茶 5銭 ミルクセイキ 10銭 ジャム付き食パン 5銭 酒類のメニューはないので、みんなが飲んでる酒は持ち込みか。
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我輩も犬である 芥川龍之介著 |
夏目漱石が好き過ぎで16歳の時に真似て書いたもの。 表題が付いていない作品であったが、書き出しが「我輩も犬である」で始まっているので、仮のタイトルとして「我輩も犬である(仮)」となっている。書き出してくださっているサイトがありましたので、興味がある方はこちらから。 我輩も犬である |
芥川 「真相は藪の中」 |
芥川龍之介の短編に「藪の中」という作品があり、それとかけている。
「藪の中」は、事件に対して様々な視点から描写されて事件を論じているので、それぞれの話で矛盾が生じたりしていて真相を見えにくくしている作品。 今回の「魔窟の女(原作タイトル)」の話も、それぞれが自分の立場でお滝殺害の事件を論じていて同じ構造に見せかけている。 |
平井太郎 | 江戸川乱歩の本名。 |
吉井 「お若いようだけど学校はいいのかい?」 |
平井太郎は高校までは名古屋で、大学に入ってから上京してきた。 入学先は早稲田大学である。大学だったので時間に自由がきいた。 |
平井 「昨夜から先生方のあとをずうっとつけていた」 |
江戸川乱歩にはストーカー気質が実際にあった。 |
さりげなく言ひし言葉はさりげなく 君も聴きつらむそれだけのこと |
オープニングにも表示されている歌。
さりげなく言った言葉を、あなたはさりげなく聴いていた。でも、それによって何かが起きたりしなかった。 と、前に書きましたが、今回の話では、伝えたい言葉を持っていたのはお滝で、伝えたかった相手は金田一という事になる。 啄木はお滝の気持ちを知っていて、二人を引き合わせましたが、お滝の気持ちが金田一にはきちんと伝わらなかった。 お滝と金田一が部屋で交わした言葉はあったけれど言葉が交わっただけで気持ちが交わらなかった。 でも、部屋を出ていく時にお滝を案じて上着をかけていく優しさを見せた金田一にそんな気遣いが出来るなら、お滝の気持ちにも気付いてほしいという願いが啄木にはあった。 うまくいかなかったのに、「夢が叶いました。ありがとうございます」と書き残すお滝の気持ちと、そんなふうにお滝を満足させた金田一のやさしさがうまくかみ合っていれば、こんな結末にはならなかったんじゃないかなと啄木は思って、この歌を詠んだのかなと思います。 啄木がきちんと金田一にお滝の気持ちを伝えておけば、というのは禁句です。 |
二銭銅貨 | 江戸川乱歩のデビュー作。 ただし、この時、乱歩15歳。作品として世に放たれるのは14年後の1923年の事である。 |
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